歯髄保存治療法
歯髄保存治療法
歯の内部にある組織で、痛みを感じる知覚機能だけでなく、歯に栄養・水分を供給する非常に重要な組織です。
従来の日本の保険診療において虫歯が進行して神経付近までに感染した場合は、通常は歯髄を取り除いて治療を行うことが一般的でした。しかし、歯髄を取り除くことで歯の強度が低下し、歯の寿命が短くなる可能性があることが分かっています。
歯髄は歯に栄養・水分を供給する役割を担っており、それがなくなるということは、歯が物質として弱くなってしまい、最悪のケースとして歯が折れてしまい抜歯をせざるを得ない状況になる場合があります。
根管治療した歯が虫歯になり菌が内部に侵入しても、再び根管内で細菌が増殖して根の先で炎症を起こすか、虫歯が進行しかぶせ物が取れるまで気づきにくい時があります。
保険の根管治療の成功率は40%未満で、米国根管治療の根管治療の成功率は約90%と統計的に言われています。再発した歯に対しての「再根管治療」の成功率は35%と落ち、治らない場合は歯の抜歯となってしまいます。
当院ではこのような問題を解決するために、「根管治療にならないための治療」を重要しており、歯髄を守り、残していく「歯髄保存治療」に力を注いでいます。
診断と説明
レントゲンや検査(電気歯髄診(EPT))を行い、その歯が生きているか死んでいるか、部分的に弱っているかを調べます。また、日常生活における痛みなどの症状の有無や程度も重要な要素です。それを分析し、正直にお伝えした上で、この治療を受けるかどうかを選んでいただきます。
治療時間の確保
虫歯を慎重に、繊細に、確実に取り除くにはどうしても時間が必要になるため、当院では約60分の予約を確保します。
マイクロスコープ、ラバーダム、MTAの使用
マイクロスコープを使用することで、肉眼では確認が難しい虫歯の取り残しの有無や神経の微細な変化を見逃さずに観察することができます。また、感染していない部分は削らないで済むので、歯の切削も最小限にとどめる事が出来ます。 ラバーダムを使用することで、唾液の中に存在する細菌がが入り込まないようガードします。 露出した歯髄や、障子の紙1枚のようにギリギリ手前で虫歯を取り終わった状況で、歯髄の保護材料「MTA」という高い抗菌作用と封鎖性に優れた歯髄活性材料を使用します。
成功率は95%で、この治療の適用範囲はかなり広いため、抜髄と言われるケースでも保存を試みています。保険診療のノルマに追われ、1日に何十人も治療しなければならない環境ではベストな治療は難しいと思っており、当院では、目の前の患者さんに歯髄保存の重要性をご理解いただき、できるだけ希望に沿えるように全力で治療に取り組んでいきたいと考えています。
※残念ながら、実際に歯髄保存療法を行う予定だった歯でも、術中の神経の状況が悪く、MTAの効果がないと判断した場合は、MTAは使用せず根管治療となることがあります。
※歯髄温存療法は自費診療となり、処置後に1カ月ほど経過観察後に部分的な詰め物や被せ物を行いますが、その処置も自費診療となります。
歯髄温存治療の成功率には、詰め物・被せ物の質も関係しています。これらの質が低いと、歯と補綴物の間にすき間が生じ、再び細菌や食べ物のかすが歯の中に侵入して新たなむし歯を作る恐れがあります。 そのため、できるだけ精度の高い詰め物や被せ物を選択し、歯を保護することが重要です。当院では、患者さんに合わせて適切な材料を使用し、歯を精密に補修します。